004) フライト生活

C社では、フライトに当たって特に「グループ制」というのは設けていませんでした。従って、毎回、毎回、フライトの度に違うメンバーが招集され、フライトをしていました。当時はクルーが5500人ほどいたので、必然的に1度一緒に飛んだクルーと再度顔を合わせる、という機会よりも、今回が初めて、という顔合わせが多かったのです。

そこで問題(?)になるのがギャレー内での会話。短距離であっという間に終わるフライトならクルー同士が無駄話、ならぬ「会話」をする時間もないのですが、長距離便になればなるほど、サービスの合間の比較的「ヒマ」な時間が長くなるので初対面で国籍も文化も違うクルー同士がなんとか和やかに互いに時間を過ごせるように会話をするのです。

とはいえ、互いによく知らない相手だし、これから先も会うかどうかも定かではない相手、ということで必然的に表面的なトピックスが多かったものです。

私が記憶する「クルーの話題 ベスト1」は

香港で住んでる場所でした
英語だと、Where do you live? (どこに住んでるの?)と聞くのが普通かな、って思うのですが皆Where are you staying in Hong Kong? (香港でどこに滞在してるの?)と聞くのです。あくまで香港は「仮住まい」の意識があったからでしょうか。

空港からのアクセスがよい場所、ということで大抵のクルーは同じような地区に固まっていたので「あ、あなたもそこなのね!」という具合に話題が発展(?)しやすく当たり障りなく「無言の時間」を「つぶせる」話題でした。

その他は「次のロングフライトはどこ?」というのが多かったと記憶しています。この話題は「当たり障りの無い話題だから」という理由の他に、C社は「スワップ」と呼ばれるクルー同士でのスケジュール交換、というのができたので場合によっては「そのフライト、私のと交換しない?」といった交渉のきっかけとして使われることも多かったです。

あとは「話題」と言ってよいのか分かりませんが「今日の為替レート」というのも香港人クルーがよく口にしてました。訪問先ごとにたとえば日本にステイするフライトであれば「今日のYenは香港ドルで○○ドル」といったことを詳しくチェックしている人が多く、マネーに対する意識の違いをよく感じたものです。

いずれにせよ、深く語り合うというよりは、表面的に波風立てずに心地よく時間を互いに過ごすため、の話題が多く、時々クルー同士でも「あー、いつものcrew talkだね」と半ば自嘲気味に言っていたことも印象に残っています。

と、書くと話題に掛ける機内、のようにも思えますが、もっと違ったところで「ボケとツッコミ」のような掛け合いがあったり、ガールズトークがたまには花開いたり、下ネタばかりの男性チーフがいたりと、意外に盛り上がるフライトもありました。 

お化けが恐い

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今でもあるのかどうかは分かりませんが、当時、会社には通称「お兄さん、お姉さん」と呼ばれる新人クルーの世話係のような役割の先輩クルーがいました。彼らとは初期の頃の評価チェックやその他、飛び始めて間もない頃に何度か面談があって仕事に対する疑問、質問、その他不安など諸々を「気軽に相談してね!」という制度でした。

客室乗務員として飛び始めて間もないある日、私ともう一人、クラスメートの男性クルーが呼び出され「お兄さん」の元へ。

「何か悩みは?」という「お兄さん」の問いかけに、もう一人のクルーが非常にまじめな顔で「僕はお化けの噂が恐くてホテルで眠れないんです」と相談。確かにクルーの仕事はフライトで様々な都市のホテルに泊まるので、そこで眠れないとなると深刻です。「お兄さん」がなんとアドバイスしてくれたかは忘れましたが、当時はお化けなんて信じてなかった私は「何言ってんの~。大丈夫だよ~。」と片付けてしまいました。

ですが、後々「やはりホテルには何かがいるかも」と思われる体験を何度かするに至り、その彼が言っていたことが正しかったことが分かりました。

具体的に何があったのかはまた別の機会に書きたいと思いますが、「お化け」なんて信じて無くても不思議と必ず眠れなくなったり、いや~な感じがするホテルは確かに存在しました...。